真剣な表情でブリに包丁を入れる男の子。「ちょっとちがう。オッケ」ウクライナから日本に避難してきているブラウン・ブラッドくん(13)。
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将来の夢に向けてこの夏挑戦したのが、日本料理の修業。ブラッドくんのふるさとは、先月もロシア軍の激しいミサイル攻撃があるなど、緊迫した状況が続いている。
ウクライナから避難 ブラッドくん(13)
「すぐにウクライナに戻れると思っていました。今年の夏こそ戻れると」
変えたくても変えられない現実。ブラッド君の日本での2度目の夏休みに密着した。
ロシアによるウクライナ侵攻から1年半。ブラッドくんは両親を残し、祖父母と日本に避難してきた。
先生
「鳥。一羽、二羽~」
ブラッドくん(13)
「いちわ、にわ、さんわ?」
慣れない日本での生活に当初は沈みがちだったというブラッドくん。救いになったのは日本料理との出会いだったという。特に気に入ったのはマグロ。見よう見まねでお刺し身に。
ブラッドくん(13)
「おいしい」
日本には寿司しかないと思っていた、というブラッドくん。味噌汁など日本食のおいしさに感動し、自ら料理するように。
そしてー。
ブラッドくん(13)
「(将来はウクライナで)日本料理店を開きたい」
帰国したら“ウクライナに日本料理店をオープンさせたい”。そのため、この夏、日本料理の修業をすることを決意。その舞台となったのが石川県金沢市。
ブラッドくん(13)
「こんにちは~」
伯母のユリアさんと訪れた。
ブラッドくん(13)
「(日本の)シェフと会って日本料理を習うのが楽しみ」
修業先は料亭の「銭屋」。のどぐろや加賀れんこんなど地元の食材をふんだんに使用し、ミシュラン二つ星を獲得している。店の主人の高木さんが、ブラッド君が日本料理を勉強したいという話を聞き招待してくれた。3日間の日本料理修業。
ブラッドくん(13)
「いいね。本物のシェフみたい」
教えてくれるのは、11歳年上の瀧本さん。まずは魚の下処理から。
ブラッドくん(13)
「ここ?」
瀧本さん
「ノーノ―ノー」
ブラッドくん(13)
「あっちょっとむずかしい。あーちょっとわかんない」
魚をまるまる捌くのは初めてのブラッドくん。なんとか下処理を終えー。次は、自宅でも独学で練習していた刺し身だがー。
日本料理銭屋・高木慎一朗主人
「えらい薄く切るね」
そこで高木さん自らお手本を。
高木さん
「この幅で」
ブラッドくん(13)
「OK?」
高木さん
「no no no ちがうよ」
切り身の厚さひとつとっても繊細さが求められる日本料理。
ブラッドくん(13)
「痛くない。だいじょうぶ大丈夫痛くない」
大根のかつらむきでは、指を少し切ってしまった。
ブラッドくん(13)
「ありがとう」
それでも何度もチャレンジ。
ブラッドくん(13)
「ああ~むずかしい」
高木慎一朗主人
「ゆっくりゆっくり」
かつらむきは最後までうまくできなかった。
高木慎一朗主人
「興味があるからもっと上手になろう、できないから悔しいと思うので、素晴らしいと思う」
慣れない料理修業をおくる中でも…。
ブラッドくん(13)
「もしもし」
ほぼ毎日続けている両親との電話は欠かさない。
ブラッドくんの母
「街は安心できない状況が続いている。比較的落ち着いたと思ってもすぐ悪くなる」
両親が暮らすクリビーリーフは、いまも1日に2時間しか水を使えない日もあるなど、子どもを帰国させられる状況ではないという。
ブラッドくんの母
「息子と離れて暮らしてることが本当に心苦しいです。一緒にいられないから寂しい」
ブラッドくん(13)
「ああ泣かないで」
両親とは、およそ1年半会うことができていない。
ブラッドくん(13)
「両親の気持ちはわかっているし、ぼくも会いたい。ただ現状は変えられないから日本でがんばるしかない」
日本料理を勉強するのにもワケが。
ブラッドくん(13)
「実は、小さい頃から父に車を買ってあげたいという夢があった。だから日本料理店を出したい」
修業最終日。まずは市場へー。
ブラッドくん(13)
「作りたい料理があるんだ」
食材を自分の目で見ながら、これから作る料理をイメージ。実はこの日、自らシェフとして料理を振る舞うことに。高木さんたちのサポートの下、コース料理の一部を担当する。
お客さんとして来店したのが、一緒に避難してきたブラッドくんの祖父母と日本に住む親戚。
一品目は大好きなマグロ料理。苦戦していた包丁さばきも褒められるレベルに。ソースはお気に入りの味噌で作ったもの。いざ家族の元へ。
ブラッドくんの祖母
「おいしい」
おじいちゃんも満足そう。次に作るのはメインのうなぎ料理。前日、修業先の銭屋で振る舞われたうなぎの料理に感動し、家族にも食べてもらいたいと考えたのだ。
さっそく炭火で焼いていく。おじいちゃんとおばあちゃんもカウンターの近くまで来て見守る。家族の応援を背に準備をすすめ、旬のオクラを添えて、うなぎ料理が完成。自慢の一品に家族はー。
ブラッドくんの祖母
「美しすぎて食べられないね。おいしい。おいしい」
修業を振り返りブラッドくんは…。
ブラッドくん(13)
「とても貴重な経験をすることができてよかった。次は両親に作りたい」
最後に、修業を終えてやりたいことを聞いてみると。
ブラッドくん(13)
「まずは…大根(のかつらむき)」
ブラッドくんの夢の道のりはこれからも続く。
(2023年8月30日放送「news every.」より)
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